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ラブライブSS 『穂乃果「センチメンタルな足取りで」②』

ラブライブSS 『穂乃果「センチメンタルな足取りで」②』

ラブライブSS 『穂乃果「センチメンタルな足取りで」②』

真姫「で、話って?」

真姫「私のことが好き?」


真姫「ふーん……」


真姫(……なんか微妙ね。顔がいいわけでもないし)


真姫(……今まで色んな男と遊んできたけど……)


真姫(花陽みたいに結婚したいとか思える人に出会えたことがない)



にこ『やりすぎなんじゃないのー?』





真姫(悪かったわね……)



真姫(もう男遊びやめようかな……)


真姫「……気持ちは嬉しい、でも、ごめんなさい」



 初めて告白を断った。


 大学に入ってから相当な数告白されて、そのほとんどをオーケーしたせいで、いっぱい男遊びをした。



 人の好意を無駄にするわけにいかないって最初は思ってた。まだまだ子供だったのね。



75: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 00:51:45.67 ID:CWUviWAL0

真姫「またちょっと、大人になっちゃったかな……」

 告白してくれた男の背を見つめつぶやく。

 

 男と付き合っている時、確かに愛は注がれてるって思えるけど、なんだか物足りない。


 やっぱり、悪いことしちゃったかな。



 彼氏がいない時間てなかなか珍しい気がする。気がつけば居たし。



 思い返して見ると、男とばかり遊んでいたせいで女の友達はほとんどいなかった。


 なんだか寂しい。


真姫「高校生の時は、彼氏なんか欲しいなんて思わなかったのに……」



真姫「……楽しかったなぁ」




 思い浮かべるのは、ラブライブの舞台。

 あの時は本当に輝いていたと思う。あそこに立っていたみんなは私も含めて、間違いなく主人公で――。





真姫「戻れるわけ、ないのにね」


 自嘲気味に笑う。



 ――さ、勉強しなくちゃ。



91: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 11:27:52.85 ID:CWUviWAL0
◇◇

 花陽ちゃんにも海未ちゃんが来るということで話を通したら、快くオーケーしてくれた。



 夜が近づくに連れて私の意識も覚醒して行き、部屋が散らかりすぎて
いることに気がついた。



 とりあえず洗濯をして、服を片付けた。掃除機もかけたし、まあこんなものかな。




 あ、キッチンの掃除もしないと。キッチン使ってなかったからなー。


 
穂乃果「んしょ、んしょ、きたなぃぃ」


 掃除は大嫌いだったけど、みんなが来るっていうなら頑張れた。


 掃除を終えて、二人を待つ。


 ピンポーン。




穂乃果「きた!」



93: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 11:30:52.83 ID:CWUviWAL0
ガチャ

穂乃果「え――真姫ちゃん?」


真姫「こ、こんばんわ」


穂乃果「どうしてここが――あ、住所」



真姫「なんだか……勉強が手につかなくて……」



 真姫ちゃんはそう言ってストレートになった髪の毛をくるくると指で弄る。


真姫「れ、連絡も入れないでごめんなさい。迷惑だったわよね」



穂乃果「ううん!! 真姫ちゃんも一緒にご飯食べようよ!!!




真姫「ご飯? ならどこかへ――」


穂乃果「ううん今日ね花陽ちゃんと海未ちゃんが来てご飯作ってくれるの!」


真姫「本当!? 私もいいの?」



穂乃果「勿論!」


 真姫ちゃんを招き入れて扉を閉める。

 するとすぐにインターホンが鳴った。



真姫「もう来たのかしら?」


94: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 11:32:18.15 ID:CWUviWAL0
 扉を開けると、今回こそ本来のお客さんが立っていた。それも二人。



海未「こんばんは」


花陽「久しぶりだね、穂乃果ちゃん」

 二人は予定を合わせたのか同時に来た。


 私の顔を見て笑って、そして私の後ろを見て驚いた。


花陽「真姫ちゃん!?」

海未「どうして」

真姫「突然押しかけちゃって」


海未「ふふ、いいじゃないですか。花陽と材料の買い出しをしたんですけど、少し多めに買ってきましたし」



花陽「人数多い方が楽しいもんね!!」






95: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 11:53:48.62 ID:CWUviWAL0
◇◇



穂乃果「あはは、なにそれー!」


真姫「本当だって言ってるでしょー!」


 花陽ちゃんが作ってくれたご飯をみんなで食べながら話していると時間はすぐに過ぎた。


真姫「それにしても花陽がµ’sの中で結婚も子供も一番だったわね」


花陽「大学卒業してすぐに結婚したからね」



海未「妊娠したなら教えて下さいよ」


花陽「サプライズしようと思って」


真姫「私も今年で卒業だけれど結婚相手とかはいないわねー」


花陽「私はこの子を生むことが今の全てだから」


海未「なんだか実感が湧きませんね」



花陽「子供を生んで、幸せな家庭を作ることが夢だなんて、ちょっとおかしいかな」



96: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 11:55:07.16 ID:CWUviWAL0
真姫「……」チラッ

 夢か。私のしたいことは、本当に医者になること?



 わからなくなってきた。もう六年生だから、後戻りなんて出来ないけど。


穂乃果「……」


 穂乃果はこんな風に感じていたのかな。


穂乃果「ううん、全然変じゃない。すっごくいい夢だと思う」


穂乃果「海未ちゃんも日舞を広めたいっていう夢、真姫ちゃんの医者になりたいっていう夢。みんな凄い、凄すぎるよ」


 私は……医者に。



穂乃果「それに比べて、私はなにもない。なにも――」



プルルルルルルルル



穂乃果「電話だ……」


穂乃果「知らない番号……どうしよ」


海未「……一本の電話が人生を変えるともいいますし」


穂乃果「出てみようか」



 穂乃果が電話に向けて恐る恐る声をかける。



穂乃果「り、理事長!?」

真姫「え!?」

花陽「理事長!?」

海未「なぜ……」



穂乃果「はい、はい海未ちゃんと花陽ちゃんと真姫ちゃんと一緒です。はい、講演会……私が?」








穂乃果「――夢に、ついて……?」


穂乃果「……」




98: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 11:56:36.53 ID:CWUviWAL0
 穂乃果は電話を切らずにそこに置いて、私たちの顔を見る。



真姫「なんだったの?」



穂乃果「音ノ木坂で、夢に関する講演会をして欲しいって」



 夢……。

海未「夢ですか」

花陽「なんで穂乃果ちゃん?」


真姫「そりゃそうでしょ。µ’sの発起人なんて言えば音ノ木にとっては生きる伝説みたいなものよ」


真姫「与える影響もなかなか大きいんじゃないかしら」


真姫「どうするの?」


穂乃果「……出来ないよ」

海未「……」






穂乃果「――私には、何もないから」





真姫「いいの?」

穂乃果「うん……」


 落ち込んだ様子で穂乃果は電話を拾う。


穂乃果「はい、すみません。はい。……多分気が変わることはないと思います」






にこ『今のあの子は穂乃果じゃない』


 にこちゃんが言った言葉が私の脳をよぎり、悲しくなった。



99: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 12:01:23.84 ID:CWUviWAL0
◇◇



凛「ここだにゃ!!」



絵里「ここ?」

希「なんだかこってりしてそうなとこやね……」




凛「大丈夫大丈夫!」

 希が辟易としながら凛についていく。

希「太ってまうよー」


絵里「凛とほぼ変わらないじゃない」


 私は希にそんなことを言いながら、希に続く。


凛「親方、いつもの三つ! 大油ね!」


 凛は手慣れた様子で私たちの分も注文を済ませる。



絵里「私たちに選ぶ権利はないのね……」



希「そうみたいやね……大油とか言ってたけど大丈夫なんかな」



 凛はわくわくした表情で席に座る。



 店内は至るところから油の香りがする。こういう系のラーメンて食べたことないんだけど……。




100: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 12:03:07.27 ID:CWUviWAL0
希「凛ちゃんここって背脂?」


凛「うん!」


希「おーなるほどなるほど、匂いからして魚介系かな?」


凛「そうだよ! すごいね!」


 そんなことを話しているうちに、ラーメンが運ばれてきた。


 ハラショーよ。本当にハラショー。




絵里「やばくない?」


希「……まあいけそうやん」


凛「余裕余裕」



 希がスープを一口。油……ヤバイわよ油。



希「うまい……」


 嘘でしょ。

 凛はすでになん口かスープを飲んで、麺に手をつけていた。




希「こんなに大量の油が入っているのに、そこまでこってりとしていない。なんだろう魚介と……柚子かな」



凛「せーかい! すごいね希ちゃん」


 なんだか希も気に入ったようだ。


凛「絵里ちゃんも食べるにゃ」

絵里「う……いくわよ。んぐ……」





絵里「――おいしい……?」

 希の言った通りだ。ありえないくらいの背脂だけれど、なんだかあっさりとしている。不思議不思議ね。




101: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 12:04:39.73 ID:CWUviWAL0
絵里「穂乃果の講演会、大丈夫かしら」



希「夢についてか。やるんかな穂乃果ちゃん」


絵里「どうかしら。連絡取ってみましょうか?」

希「うん」



 突然ごめんなさい。
 理事長にあなたの電話番号教えたのは私なの。

 それで講演会やるの?




絵里「送信ー」


希「凛ちゃんはここの常連なん?」


凛「そうだよ、体育科の先生と一緒によく来るんだ」


絵里「流石体育会系ね……」


凛「男の人ばかりだらね。凛の職場は」


凛「女の人は国語とか英語とか多いけど」



絵里「確かに私も日本語の講師ね」



凛「でしょー」


希「ていうかえりちってロシア語喋れたんやね」


絵里「失礼ね、日常会話くらいならできるわよ――」


 穂乃果からメールが帰ってきた。





 あ! そうだったんだ、びっくりしたよ笑
 私はやらないかな、夢とか私には無いし、語る資格なんてないよ。





絵里「……穂乃果やらないって」

希「どうして?」


絵里「今の自分には夢がないから、そんなことをする資格はないって」

希「……なんか以外やね」

希「穂乃果ちゃんならやりそうやけど」



絵里「そうね……」



104: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 15:08:20.04 ID:7/vN3VuhO
◇◇


穂乃果「うーん、朝かあ」


穂乃果「楽しかったぁ」

穂乃果「メール来てる」



穂乃果「師匠から……」


穂乃果「……今日の夜、和菓子をもう一回作ってみろ……か」




穂乃果「……無理だよ……」

 和菓子を作るのがいつからか嫌になっていた。



『穂乃果らしくない』

穂乃果「私らしくないってなにっ!? 今の私は私なのに!!」





穂乃果「……もう技術をどうあげればいいの? することは、してきたよ!!」




 改善の方法がわからない。

 無難に終わらせようとしていたとはいえ、精一杯作っていたのも事実。




穂乃果「どうしてだめなのか、わからない」



 どうすれば。どうすればいいの?


穂乃果「もう……家に帰ってみようかな」


106: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 15:20:46.25 ID:7/vN3VuhO
◇◇
公園




真姫「……」

真姫「医者か……」


 パパとお母さんが医療関係の仕事についている。


 医者になる理由でこれは多い。私もそうだった。小さいころはピアニストになりたかった。



 ピアニストの夢は現実に押しつぶされたから、医者は夢というかならなければならないものになっていた。


 そんな時、私を救ってくれたのはスクールアイドルだった。


 私を見つけてくれた、穂乃果。



 でもそれを夢にして、夢が叶った後どうしようもなかった。


 アイドル研究部も今はない。多分衰退の原因は私たちが三年生になったからだ。


 穂乃果っていう損失は大きすぎた。



 スクールアイドルを辞めて、私に何がしたいか。わからなかった、なし崩し的に医者を目指して、これが自分の夢なんだと言い聞かせた。





真姫「どうしたいの、私は……」


107: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 15:23:28.97 ID:7/vN3VuhO
 穂乃果は私を羨ましいと言ったけど、私は……。








「――きゃあああああ誰か!」


 女の人の悲鳴が聞こえた。


 顔を上げて見ると、そこには倒れた子供とそれに寄り添う母親。


真姫「っ……」



 一瞬の状況判断。

 自然に身体が動いていた。




真姫「大丈夫ですか!?」

「は、はい」


真姫「何がありました!?」


「急に倒れて」

真姫「聞こえますか!? 大丈夫ですか!?」



真姫「……息はある……いや違う! これは……死線期呼吸!?」




真姫「救急車呼んで下さい!」

「はい! あ、あなたは?」




真姫「――通りすがりの医学生です」


109: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 15:33:17.49 ID:7/vN3VuhO
真姫「いいから早く!!」


 私は原因がわからないが、とりあえず心肺蘇生法を行うことにした。



真姫「死ぬな、死ぬな!」

真姫「逝くな逝くな逝くな!!!!」



 一通りの心肺蘇生法を行うが、息は戻らない。




真姫「戻ってこい……!」



 そんなことをしているうちに救急車の音がした。

 早い。



 病院の近くだからだろう、普通よりかなり早い。



 救急車が到着して、降りてきた人に一通りの説明をする。



真姫「心肺蘇生法をしましたが、戻りません。あと先ほどまで死線期呼吸をしてました!」



真姫「……はい、あとはお願いします」




 母親と子供を乗せて救急車は去っていった。



110: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 15:35:55.60 ID:7/vN3VuhO
 死線期呼吸だったから、きっと助かる。


 あれ、なんだか足に力が入らない。
 その場にヘナヘナと座り込む。スカートが汚れちゃう。


真姫「はは……情けないわね。私」




 勉強は出来る、見た目もいい。なんでも出来るんじゃないかなんて言われることもある。



 でも実践ではこのざま。



 目の前で人が死にそうになっているところに、自分しか医療の知識がないっていう状況は初めてだった。

 いつもは周りに何人も研修医や医者もいる。



 ――怖かった。




真姫「でも身体は動いてくれた」


真姫「……ああいう人がたくさんいるのよね」




 ――助けたい、一人でも一人でも多く。私の手で、





真姫「――あれ、私……医者になりたいんだ」






 初めて自分から、心から、そう思ったことに気がついた。




111: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 15:38:52.81 ID:7/vN3VuhO
◇◇


穂乃果「ただいまー……」



 おそるおそる入ってみる。


雪穂「お姉ちゃん!!??」


雪穂「どうしたの急に!!」

 雪穂が中から飛び出してくる。



穂乃果「うん……ちょっと……」



穂乃果「お父さん、いる?」

雪穂「……あっちに居るよ」




 雪穂が差した方向は和菓子を作るところ。やっぱりまだ作ってるのかな。




穂乃果「ただいまー……」


 お父さんの後ろ姿を捉える。




穂乃果「ただいま……お父さん」



112: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 15:44:05.01 ID:7/vN3VuhO
穂乃果「何しに帰ってきたかって? それは……」



穂乃果「……わからなくなって……私が何をしたいのか」


穂乃果「師匠とは……うん」


穂乃果「何がダメなんだろう」


穂乃果「え? 今から私がやるの? ダメだよ、私が作ったら味落ちちゃうよ!」


穂乃果「そんなのは分かってるって……でも……」


穂乃果「わかった」



 私はお父さんと代わって作業を始める。

 自然と手は動く。そりゃそうだ、ずっとやってきたんだから。

 なんでこんなことさせるんだろう。



 そんなことを思いながら、一時間以上作業をして、完成した。



穂乃果「どうするの、これ」


穂乃果「え!? 無償で提供!?」


穂乃果「ま、まあ私が作ったものだし……」


穂乃果「分かった呼び込みしてくる」


穂乃果「ねえお父さん。なんでこんなことさせるの?」


穂乃果「やればわかる?」


穂乃果「……そっか」


穂乃果「ねえお父さん、私の和菓子、食べて見てよ」



113: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 15:48:40.08 ID:7/vN3VuhO
 お父さんが和菓子をひょいと口に運ぶ。師匠の時はダメだったけど、お父さんなら……。




穂乃果「ダメ……? そうだよね……」




 なんで期待なんてしたんだろう。



 私が力不足なのは分かってるはずなのに。



 店を出て、呼び込みを開始する。



穂乃果「穂むらの和菓子いかがですかー、今なら試食できまーす」



 すると、一人の子供がやってきた。



子供「おばちゃんちょうだい」


穂乃果「おばちゃ……くっ、はいどーぞ」


 心底腹が立ったが、まあ仕方がない。私も小さい頃は20代がおじさんおばさんに見えたものだ。


子供「おいしー」


穂乃果「え……う、うんありがと」


 そう言って去って行った。



 ――おいしいって言われた。なんだろ嬉しい、すっごく嬉しい。



114: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 15:58:42.05 ID:7/vN3VuhO
 その後も何人かが途中からだけど、私の作った和菓子を食べてはおいしいって言って笑顔を見せてくれた。


 その中には愛想笑いもあったかもしれないけど、嬉しかった。


 気づけばもう和菓子は無くなっていた。



穂乃果「……笑ってた。みんな……」


 なんだろう、この感覚。私の作ったものでみんなは一瞬でも幸せになって、くれたのかな。




穂乃果「――!!」



 ああそうか。分かった。

 お父さんが私に何を伝えたいのか。


 店に入ると、お父さんはまた作業をしていた。



穂乃果「お父さん!! 分かったよ。私。お父さんが何を伝えたいのか」




穂乃果「……ありがとう」







 ――見つかったよ、夢。




115: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 15:59:50.10 ID:7/vN3VuhO
ママ「穂乃果!!」




穂乃果「お母さん!」

ママ「頑張ってきなさい」

穂乃果「うんっ!!」




 私は家を飛び出した。

 するとそこには――。




海未「穂乃果! なんでここに!!」

穂乃果「うん、色々あったの」



穂乃果「……海未ちゃん! 私やるよ! 講演会!」


海未「え?」



穂乃果「みんなに、伝えたいことがあるんだ!!!」

海未「ちょっと、穂乃果!!」





海未「ふふ……猪突猛進……穂乃果らしいですね」


116: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 16:01:43.69 ID:7/vN3VuhO
◇◇

穂乃果「師匠!」


師匠「おう」



穂乃果「和菓子作りもう少し待って下さい!!」


師匠「なんだと?」



穂乃果「……分かったんです。私、なんで師匠にずっとダメだし受けていたか。技術もそうだけど、一番足りないものは他にもありました!」



師匠「……」


穂乃果「もう少しで、掴めそうなんです。この気持ちをみんなに伝えたい! お願いします、もう少し待って下さい!!」



師匠「……ふん、一週間以内だぞ」


穂乃果「ありがとうございます!!」




117: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 16:03:06.68 ID:7/vN3VuhO
 私は店を飛び出して、履歴から理事長に電話をした。


理事長『もしもし』


穂乃果「理事長! 私やります、講演会やります! やらせて下さい!」



理事長『ふふ……そう言うと思った』


理事長『3日後』

穂乃果「え?」


理事長『3日後の月曜日でどうかしら』

穂乃果「近くないですか!?」

理事長「やると思って予定を入れてたの」




穂乃果「――うぅ……わかりました。それまでに考えておきます!!」




118: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 16:19:13.77 ID:7/vN3VuhO
◇◇

 暇が出来たからってことでことりに連絡を入れてから少し遅れてしまった。


にこ「待ってるかしら」


 なんだか海外らしいオシャレな喫茶店に入って辺りを見回すと、ことりの姿が目に入る。


にこ「ごめん待った?」


ことり「大丈夫だよ」


ことり「忙しいんじゃなかったの?」


にこ「観光しようと思ってたんだけど、ことりがいるんだからことりと居た方が楽しいと思って」


ことり「もう……恥ずかしいなぁ」



にこ「それにしてもあんた海外行ったとは聞いてたけど、すごいわね。あそこの専属のデサイナーとして雇って貰えるなんて」


ことり「運が良かっただけだって」



にこ「運だけで入れるほどあまくないでしょ」



119: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 16:23:24.47 ID:B2t6ZLBDO
にこ「専門学校からどうやって海外まで来たの?」


ことり「専門学校にいる時に、デサイナーのコンテスト的なのに応募したらまあ、賞もらって……それでスカウトされたの」


にこ「へぇ……すごいわね」


ことり「にこちゃんこそ、アイドルしてたんじゃなかったの?」


にこ「ああ、もう辞めたの。流石に年齢には勝てないからね」


にこ「でも最近は女優としてなかなか調子いいのよ?」


ことり「すごいね!! 応援する!」

にこ「ありがと」



にこ「ねえあんた、夢ってある?」

ことり「夢?」



ことり「そうだね……すっごい利己的なことだけど、やっぱり私のデザインした物が評価されてもっともっと広く知れ渡ったら、独立してブランドを立ち上げたい」



にこ「へぇ……すごい」


にこ「ことりならできるわよ」



ことり「ありがとう、頑張るね!」




120: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 16:24:32.60 ID:B2t6ZLBDO
プルルルルルルルル


ことり「あ、お母さんだ」


にこ「出ていいわよ」

ことり「ごめんね」



ことり「もしもし」

ことり「うん、うん」

ことり「穂乃果ちゃんが?」

ことり「うん……考えとく」


にこ「穂乃果がどうしたの?」



ことり「音ノ木で講演会やるんだって」

にこ「なんの?」

ことり「そんなに長いものじゃないらしいけど――夢について」

にこ「……夢」

にこ「穂乃果……」


ことり「3日後にやるんだけど、見に来ないかって」


にこ「3日後……私は行くわよ」


ことり「私は……」


にこ「久しぶりにみんなで会えるかもしれないし」



にこ「――みんなでね」



ことり「……でも」

にこ「……好きにしなさい?」


ことり「……行く」

にこ「いいの?」

ことり「夢は大切だけど……µ’sっていうのは――私にとって今も夢だから」




にこ「――ふふ、そう言うと思った」




121: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 16:32:50.25 ID:B2t6ZLBDO
◇◇

絵里「お仕事はいいの?」


希「大丈夫やで」


希「えりちこそ、何日かしかいられない日本ウチと二人で過ごしていいん?」


絵里「なによ、別にいいでしょ」


希「彼氏とかは?」


絵里「いませーん、悪かったわねー」

希「ウチ居るよ」


絵里「え? 嘘でしょ?」



絵里「そのおっきいおっぱいはもう既に誰かのおもちゃなの!?」

絵里「もう何回も弄ばれているの!?」



希「嘘やけど」



絵里「ふざけないで」



希「えりちこそ。なんなんウチのおっぱいがおもちゃとかなんとか。サイズ的にはほとんど変わらないやん」



絵里「……待って穂乃果からメール」

希「あれ、ウチもや」





絵里「――ふふ……本当穂乃果ね」


希「うん。行くやろ?」


絵里「もちろん」



122: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 16:33:40.60 ID:B2t6ZLBDO
◇◇

 穂乃果のメールはみんなに送られたものでした。



海未「みんな、揃いますかね」



 月に向かって問う。




 当然答えは帰ってこないが、3日後µ’sがまた揃う。そんな気がしました。



海未「さあそろそろ寝ましょうか」




125: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:12:55.02 ID:CWUviWAL0
◇◇


3日後






穂乃果「すぅ……」






穂乃果「――ただいま、音ノ木坂」


 校門の前に立ち、深呼吸をする。




真姫「……どう?」

穂乃果「考えてない」


ことり「えぇ?」

海未「まったく……」



穂乃果「さっきみんなから聞いた話、それだけで十分話せる」



 みんなで語り合ったのは夢の話。

 海外にいたことりちゃんはわざわざこの日の為に帰ってきてくれた。

 絵里ちゃんも希ちゃんも凛ちゃんも何年降りだろう。



 なんだか恥ずかしいな、講演会だなんて。講演会といえば毎回体育座りをしながら眠っていた記憶しかない。



 でも中には聞いてくれる人もいる。



 第一µ’sのメンバーが聞いてくれるんだもん。


126: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:14:49.54 ID:CWUviWAL0
 私たちは職員玄関から理事長室に向かった。


穂乃果「ことりちゃん、お仕事とか大丈夫?」


ことり「大丈夫だよ、穂乃果ちゃんがそんな心配しないで?」


凛「良かったー午後授業入ってなくてぇ……今回ばかりは非常勤講師で良かったにゃー」

絵里「甘えないように」

凛「がんばるー」



海未「懐かしいですね……」



 前はずっとここに通っていた。
 もうこの景色なんかも見飽きたけど、でも……なんだか新鮮なんだ。



 理事長室に辿りついて、そのままドアを開ける。


穂乃果「失礼します」



理事長「いらっしゃい」

穂乃果「今日はよろしくお願いします」

理事長「こちらこそ」

理事長「まだ時間はあるから大丈夫よ。みたいところとか、あるんじゃない?」



穂乃果「……見たいところ……」



127: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:16:23.55 ID:CWUviWAL0
理事長「生徒は授業中だから静かにね」



 私は理事長にお礼を言って理事長室を出た。


 するとなんだかみんなが花陽ちゃんを取り囲んでいた。


穂乃果「なに?」


にこ「いま花陽の子供が生まれたらなんていう名前にしようか考えてたのよ」


にこ「そうだ、にこって名前にしなさいよ。あげるわよ、ほら私みたいになれるかも!」


真姫「すごいマイナスポイントじゃない」


にこ「なんですって?」


真姫「真姫って名前でもいいわよ?」



にこ「そんな名前つけたらガッチガッチの石頭になっちゃうじゃない!」


真姫「はぁ!?」


花陽「ま、まだ女の子とは決まってないんだけど……はは」



穂乃果「――ねえみんな、時間まだあるから屋上行こうよ!!」




128: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:18:34.13 ID:CWUviWAL0
◇◇


穂乃果「うわー懐かしいー!!!!」


希「ここは変わってないなぁ」


 屋上に辿りついた私達は、遊んだり踊ったり様々なことをした。


希「……穂乃果ちゃん!?」


 私はハシゴを登ってさらに高いところへ。

 ラブライブの前日、みんなで眺めた町の風景。


穂乃果「……変わっちゃった」



 高いビルなんてほとんど無かったのに、季節が変わる度に街の色を塗り替えていった。



 前のような下町の雰囲気は少しずつ消えていっている。



穂乃果「大人になってきてるんだね、君も……」



 一人で町に語りかける。



真姫「穂乃果ーなにしてるのよ!」



穂乃果「ごめんごめん、ねーねーみてーまだ私踊り覚えてるー!!」





希「穂乃果ちゃん、そろそろ時間やない?」

穂乃果「本当だ!! いこう!!!」



129: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:36:06.50 ID:CWUviWAL0
◇◇


ことり「穂乃果ちゃん、大丈夫かな」


絵里「うーん」

海未「また生徒会長だった時みたいに、なにも出てこない可能性も」


にこ「――大丈夫よ、いまの穂乃果なら」


真姫「もう夢もあるみたいだしね」

花陽「そうだね」

凛「楽しみだにゃー」




 始めにµ’sのライブとかこれまでのこととががスクリーンに映しだされた。


 それが終わると生徒の紹介を受け、私はステージにあがる。


 生徒会長としてここには何回も登ったなあ。




穂乃果「みなさん、こんにちは! ご紹介にあずかりました高坂穂乃果です」



穂乃果「さて、今回の講演会ですが。夢についてです」



穂乃果「夢っていうととても抽象的で、なんだかふわふわしているもの」






穂乃果「――私はずっと夢を見てきました」


130: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:37:25.99 ID:CWUviWAL0
穂乃果「私はスクールアイドルµ’sを立ち上げました。それは先ほどの映像で分かってくれているかなと思います。廃校を阻止したいそんな夢を持ってスクールアイドルを始めたんですけど、それに賛同してくれる仲間が集まって……」



穂乃果「辛いこともありました。µ’sを辞めるって言ったこともありました」



海未「……」


穂乃果「でも、ふふ……なんだろう。仲間のおかげなんです。夢に向かって、みんな同じ夢を見ていたから私は今ここにいられて……」



穂乃果「廃校を阻止した後は、ラブライブ出場が夢になりました」


穂乃果「私達の先輩と踊れる最後のチャンス」



穂乃果「私はまた――夢を見ることが出来ました」



穂乃果「やっぱり辛いこともあったし、悩んだこともありました。三年生が卒業する現実が受け止められないこともありました」



希「……」

絵里「……」

にこ「……」




穂乃果「でも、時間は止まってくれません。例え泣いてたって笑ってたって」



穂乃果「精一杯楽しもうって決めて……それでラブライブで優勝出来て、夢は叶いました。――みんなの夢は叶いました」



132: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:38:26.53 ID:CWUviWAL0
穂乃果「私は高校二年生から夢を見ました。それ以降は本当に日々がキラキラとしていて、今思い出してもかけがえのない日々だったと思います」



穂乃果「私という人間を語る上で夢というのは切り離せません」




穂乃果「夢なんていらない、夢なんてない。そういう人もいるとは思います。そういう人は、中学校や高校でかかされる将来の夢っていうのが大嫌いだったと思います。私もそうでした」




穂乃果「私が言う夢はそれとは違います。夢っていうのは大人になった時のことじゃなくて、自分が今一番やりたいことがそれはそのまま夢になるんだと思います」




穂乃果「――私は高校を卒業して、夢がありませんでした。私は和菓子屋の娘だったのでなんとなく和菓子業界に」



穂乃果「なんとなくだと、辛いことも苦しいことも乗り越えられない。それは私が弱いだけかもしれませんが……。――でも私はまた夢が出来ました」




穂乃果「没個性で、この業界にいる人には普通のことかもしれません」



穂乃果「――和菓子を通じて、みんなが笑顔になってもらいたい。少しでも幸せになってもらいたい」



穂乃果「そう考えたら一気に道は開けました!」



穂乃果「普通のことでいいんです。夢があるから頑張れる」





穂乃果「……夢があるから、私は私でいられる」



133: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:39:30.47 ID:CWUviWAL0
穂乃果「日舞を広めたい、デザイナーになりたい、外国と日本を近づけたい、子供達の笑顔がみたい、幸せな家庭を作りたい、雑誌の編集長になりたい、女優として華を咲かせたい、医者になってみんなを救いたい」


穂乃果「なんでもいいんです。昔は一つのことを夢にしていたけれど、今はみんな違うことを夢にしています。でも夢に向かうその気持ちはみんな同じ」


穂乃果「夢の形はそれぞれです。それぞれが好きなことで頑張れるならそこがゴールになると思うんです。でもそれは次の夢へとスタートライン」



穂乃果「後になって後悔しないように、戻りたいと思っても時間は戻ってくれません、私達はいまを生きて、今のなかで生きていくしかないんです」



穂乃果「みなさん、少しでも可能性を感じたら、それは夢です。夢を持って下さい!  そしたら世界はきっと輝いて――」



穂乃果「……ふふ」

穂乃果「私からは以上です!」



穂乃果「みんな――ファイトだよ!!」



 私が頭を下げると、大きな拍手に包まれた。
 顔を上げて、後ろに立っているみんなを見る。

 みんな微笑んで――。





絵里「穂乃果らしいわね」

真姫「そうね」

凛「凛達の夢言われちゃった……」


ことり「そういうことだったんだね」

希「いい講演会やん」

花陽「穂乃果ちゃん……」

海未「さすがです」






にこ「ふふ――おかえり、高坂穂乃果」


134: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:40:18.81 ID:CWUviWAL0
◇◇


 風が木々を揺らして木漏れ日が少し眩しい。

希「変わらんね」

穂乃果「うん」


 絵里ちゃん達の卒業式の日もそう言えばこうやったっけ。


 なんだかここは居心地が良くて私達の卒業式の時もこうやって並んで寝転んだ。


 サラサラと音を立てて揺れる木々は前よりも更に大きくなったようだ。前はここまで枝は無かった気がするんだけど。




 ――あぁ本当、落ち着く。

 この気持ちをとっておきたい、保存したい。



 そんなこと、考えたこともなかった。

 だって、みんなで笑って、泣いて、悩んだりの毎日がずっと続いてくってそう思ってた。



 季節は過ぎて私達は大人になった。




135: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:41:30.42 ID:CWUviWAL0
真姫「穂乃果かっこよかったわよ」


にこ「そうね」

穂乃果「ありがと、ちょっと綺麗事ばっかだったかな……」


絵里「そんなことないわ」


花陽「みんなの夢を聞いたのはそういうこと、だったんだね」


凛「ちょっと恥ずかしかったよ」


穂乃果「名前は出してないんだからいーじゃん」


海未「でも――なんだか懐かしいですね」


ことり「そうだね」

穂乃果「次はいつみんなで集まれるかな」

絵里「私は海外に住んでるからね」

ことり「私も」

穂乃果「――じゃ、また何年後かな」



穂乃果「あ! 花陽ちゃんが子供生まれたら集まれるかな?」



花陽「がんばるね!」







136: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:42:29.52 ID:CWUviWAL0
穂乃果「……みんな夢に向かってがんばろうね」


海未「はい」


ことり「うん!」


花陽「うん」


凛「もちろん!」


真姫「当たり前でしょ?」


絵里「ええ」


希「そうやね!」


にこ「ま、見てなさいよ」


穂乃果「えへへ……」




穂乃果「――みんなー!!! がんばれーっ!!!!!」



137: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:43:07.49 ID:CWUviWAL0
 木漏れ日のなかに叫んだ言葉は、不意に吹いた風によって掻き消された。


 でもみんなには届いている。だってこんなにみんな近くにいるんだから。


 揺れる木々に今までのことが映しだされているような、そんな感じがした。やっぱり、少し切ない。



穂乃果「よーしっ!! これからどこか寄って行こうよ!!」





 グイッと立ち上がって、一歩を踏み出す。







 ――こうやって、感傷的になって踏み出した一歩も、きっと悪くはないんだ。



138: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:43:51.81 ID:CWUviWAL0
◇◇


師匠「いいのか?」


穂乃果「はい」


穂乃果「私はいつの日からか、師匠の与える課題を無難に突破して、怒られないことだけを願って和菓子を作っていました」


穂乃果「それじゃあダメなんだって気がつきました」


 師匠が私の作った和菓子を一口。


穂乃果「みんなに喜んでもらいたい。笑顔にしたい、そんなことにも気がつけずに」


穂乃果「私は、自分の和菓子でみんなを幸せにしたいんです!」



師匠「――合格だ。やっぱ高坂さんとこの娘だな」



穂乃果「ありがとうございます! でもまだまだ技術が足りないことは自覚していま――」


師匠「――それなんだけどな、技術自体は全然悪かねえんだ」



穂乃果「え?」



139: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:45:51.42 ID:CWUviWAL0
師匠「ここに勤めだした時から中々技術はある方だったしなぁ。特にまんじゅう系統のは随所に穂むらの良さが出ている。相当作り込んできたことは想像できた」



師匠「ただ……他の和菓子はまだまだ全然、高坂さんの足元にも及びやしねえ」


師匠「技術は確かに悪くはないが、穂むらという看板を背負うには足りなすぎる」



師匠「高坂さんは本当に凄い人なんだ。知らなかっただろ?」

穂乃果「……」


師匠「一番の問題は……お前さんの和菓子には、なんていうのか、気持ちがこもってないような気がしてなぁ」



師匠「実は高坂さんに頼まれたのは、技術よりもお前の心をなんとかしてくれって言われてたんだ」


穂乃果「お父さんが……?」


師匠「技術は確かにどんどん上手くなっていった。ただ、それと引き換えに情熱はどんどんなくなっていった。そう思ったんだ」






140: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:46:38.64 ID:CWUviWAL0
師匠「こう言っちゃなんだが、技術なんて俺じゃなくて高坂さんが教えれば済むことだしな」




師匠「ま、結果として俺は何もしてないから、高坂さんに頭が上がらないんだけどな」


師匠「お前の経緯はわかんねえが、今までなんとなくなんとなく和菓子を作っていただろ?」



穂乃果「……はい」



師匠「そのなあなあな気持ちのせいで、和菓子作りもそして他の行動にも影響が出ていたんじゃないか」


穂乃果「……確かに、入ってきた時よりも失敗は多くなってます」


師匠「でも今回のことで気がつけた」



穂乃果「……はい!」



141: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:47:46.19 ID:CWUviWAL0
師匠「それならもう心配はいらねえな」



師匠「柄にもなく褒めちまったが今回限りだぞ。高坂さんとこに返すまで、またビシビシ厳しくするからな



師匠「このまま返しちまったら高坂さんに申し訳がたたねえしなあ」



師匠「俺のに耐えられないなら、高坂さんの修業には耐えられないからな」






穂乃果「――はい!! また、よろしくお願いします!!!!」





 夢は終わらない。

 私はようやくスタートラインに立ったんだ。




142: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:48:50.53 ID:CWUviWAL0
◇☆◇☆






「お母さーん!!」


「なに?」



「なんか変」



「最近咳してたもんね、大丈夫?」


「うーん」


「熱あるじゃない」


「微熱だから大丈夫だと思うけど」




「真姫ちゃ――西木野先生に見てもらう?」



「あの先生怖いー」



「あはは……あの人って本職は脳外科だったのに私が無理言っちゃったからね」



「薬飲んで寝てなさい」


「はーい」


「――ふぅ、みんなまだかな」



ガララッ






「こんにちは」


「――っ……ふふいらっしゃいませ」




143: ◆nv1kPr3aqINd:2014/07/28(月) 19:50:40.68 ID:CWUviWAL0
「ご注文は?」



「じゃあそうやね、なににする?」


「おすすめでいいんじゃないの」

「えー」

「あんたは黙ってなさい」


「じゃあおすすめを……8個」

「いや――みんなで食べるんだから……ね?」



「……ふふ……かしこまりました!!」



「あれ!? ない!!」

「う、裏にあったかな」

「少々お待ち下さい!!」



「――変わらないわね」

「そうね」

「いいお母さんって感じ」

「本当久しぶりだなあ」





ダッダッダッダ









「――穂むら名物ほむまん9個、お待たせしました!!!!」





おわり


記事タイトル:

ラブライブSS 『穂乃果「センチメンタルな足取りで」②』

関連ワード :

高坂穂乃果

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