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痛みを抱えているからこそ溢れる真の優しさ「ユーリ・ミハイロコフ」の魅力『プラネテス』

『プラネテス』、聞き慣れないこの言葉は、古代ギリシャ語で「惑う人」転じて「惑星」という意味を持っています。本作品には、どうにもならない現実に直面し、惑いながらも生きることや愛することに真摯に向き合って

痛みを抱えているからこそ溢れる真の優しさ「ユーリ・ミハイロコフ」の魅力『プラネテス』

 『プラネテス』、聞き慣れないこの言葉は、古代ギリシャ語で「惑う人」転じて「惑星」という意味を持っています。本作品には、どうにもならない現実に直面し、惑いながらも生きることや愛することに真摯に向き合っていく人々が数多く登場します。まさに「惑い人」のタイトルの通りです。ほんの少し未来の地球と宇宙を舞台にした、味わい深く壮大な人間ドラマ『プラネテス』。今回は、登場人物の中でもっとも「イイ男」と言っても過言ではない「ユーリ(ユーリ・ミハイロコフ)」の魅力を紹介します。

とにかく紳士!分け隔ての無い柔らかな気遣い

 ユーリは宇宙開発会社・テクノーラ社のデブリ課で船外活動員として働いています。デブリとは、捨てられて使われていない衛星などの「宇宙に浮遊するゴミ」のこと。デブリ課は、宇宙船に乗ってデブリを回収するのが仕事です。

 ユーリは、デブリ回収船「トイボックス」の副船長です。数字に強く知識が豊富、温厚な性格とそつのない優秀な人材であるユーリは、船長のフィーから相談を持ちかけられるほど頼りにされ、周囲の人々からも一目置かれています。

 そんなユーリの魅力は、誰に対しても細やかな気遣いができるところ。仕事で不在になる社員から動物を預かって世話をし、新人の「タナベ」が暴走するたびに気遣い、同僚と殴り合いのケンカをして帰ってきたハチを看病し・・・。ユーリのフォローなしにデブリ課は成立しません。ユーリが細やかに気を配れるのは、いつも一歩引いて周りの人を観察しているからです。

 また、デブリ課のメンバーが、宝くじを当てようとバカ騒ぎしている時に、程よい距離から温かい目(?)で見守り、度重なるミスの末に難易度の高い業務をハチが成功させた時に、「始末書は誰が書くんですか?」とボソッとつぶやいたり・・・。根は案外クールなのかもしれません。

優しい笑顔に隠された、深い痛み

 誰よりも「大人の男」の魅力を放つユーリですが、最初からこんなふうに悟っていたわけではありません。20歳ぐらいの頃には「自分は何だろう?他者とは何だろう?宇宙とは何だろう?」と疑問を持ち、地球中を彷徨っていたと話しています。ユーリもまた、タイトルの通り「プラネテス(惑う人)」だったのです。そして、何よりもユーリの人生を決定付けたのが、高高度旅客機「アルナイル8型事故」でした。

 奥さんと一緒に事故機に乗っていたユーリ。ユーリだけは奇跡的に助かりましたが、奥さんは亡くなり、遺体すら発見することができませんでした。せめて遺品として、奥さんが肌身離さずネックレスにしていたコンパスを見つけたい。ユーリが、わざわざ危険なデブリ回収の仕事に就いたのは、ただひたすら奥さんの遺品を探すためでした・・・。

 かつてのデブリ課の上司「ギガルト」に死期が迫っていることを知って悩むタナベの相談を受けたり、作業中のハチマキを見失って死なせかけてしまったことを悔いるフィーをなぐさめたりと、人の生死が関わる苦しみも、ユーリは優しくいたわります。ユーリが優しいのは、大切な人を失う深い痛みを知っているからです。つらいけれど、それもまた、ユーリの魅力の一つと言えるでしょう。

幾多の迷いと悲しみを乗り越えて得た、大きな包容力

 ユーリはトイボックスの船内にさりげなく白いカーネーションを飾ってきました。白いカーネーションの花言葉は「私の愛は生きている」。そう、1日たりとも亡くなった奥さんのことを忘れず、悼んできたのです。

 そんなある日、デブリ回収中のユーリが突然フィーの指示を無視し、単独行動を始めます。冷静なユーリにはありえないことです。自分の命をかけて向かった先にあったのは・・・ユーリの奥さんのコンパス。奇跡的に、手にすることができたのです。そしてユーリは、再び生きる指針を取り戻します。

 しかし発見したのも束の間のことでした。休暇を利用してハチマキの実家に遊びに行った時、コンパスはハチマキの弟・九太郎が作ったロケットの事故で壊されてしまうのです。大切な遺品を壊して落ち込み、謝罪する九太郎にユーリは告げます。「宇宙と地球の境目はないみたいなんだ」「だから、コンパスこわしてくれてありがとうね」と・・・。

 後にこの事件を「未来のエンジニアが過去にこだわる自分を壊してくれた」とユーリはフィーに温かく語りました。奥さんを亡くした痛みにとらわれ続けていたユーリ。しかし、コンパスが壊れたことで、ユーリの奥さんへの愛は変わらぬまま、改めて宇宙の中で仲間とともに力強く生きてゆく決心をするのです。

 いつの間にか一人称が「私」から「俺」になり、周りの人にフランクな言葉で接するように身軽になったユーリ。彷徨った果てに、ユーリは単に親切なだけではなく、大きな包容力を持つ本当の意味で温かい人になったのです。

 仕事についての物語としても、愛についての物語としても重厚な『プラネテス』。一話一話の密度が濃く、緻密に張り巡らされた伏線は、後半に向かうにつれて一気に収束していきます。先進国と後進国の格差は埋まらないのか?会社組織の建前と人間としての倫理は一致できないのか?人と人は愛によって本当に解りあえるのか?自分の限界はどこにあるのか?様々なことを考えさせてくれるこのアニメは、何度観ても胸に迫ります。綿密に設計された宇宙船などの設定と合わせて、じっくりと楽しんでみてください。

(C)幸村誠・講談社/サンライズ・BV・NEP


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痛みを抱えているからこそ溢れる真の優しさ「ユーリ・ミハイロコフ」の魅力『プラネテス』

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