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コスプレ、特撮、同人…オタクの実態を描いたマンガ10選

夏本番! 今週末はオタクの一大イベント・夏コミ※1 が開催されますが、参加される方は暑さ対策など万全でしょうか?2014年の冬コミ参加者は56万人と、巨大イベントへと発展したコミケですが、その裏に

コスプレ、特撮、同人…オタクの実態を描いたマンガ10選

夏本番! 今週末はオタクの一大イベント・夏コミ※1 が開催されますが、参加される方は暑さ対策など万全でしょうか?

2014年の冬コミ参加者は56万人と、巨大イベントへと発展したコミケですが、その裏にはオタク人口の爆発的な増加があります。今回は、そんなオタクたちが主人公のマンガを集めてみました。

「オタクと恋愛」「隠れオタ」「オタクの日常」「同人活動」の4テーマを軸に、個性あふれる10作品をご紹介。オタク文化に興味はあるけれど薄くしか知らない、という人のための用語集つきです。

オタクと恋愛

二次元があれば恋愛なんて必要ない! そんな方もいらっしゃるかと思いますが、恋とは問答無用で「落ちて」しまうもの。突然の萌え※2 に抗えないように、誰かを好きになる気持ちは、なかなか自分では止められません。ここでは、そんなオタクたちの恋愛事情を扱ったマンガをご紹介します。

無器用なオタクカップルがかわいい!『ヲタクに恋は難しい』

『ヲタクに恋は難しい』 ふじた / 一迅社

ダ・ヴィンチ×niconicoのマンガ賞「次にくるマンガ大賞2014」で、“本にして欲しいWebマンガ部門”第1位となり、イラストSNSのpixiv※3 でも話題となった作品。

隠れ腐女子※4 のOL・成海(なるみ)と、クールなイケメンながら重度のゲーヲタ(ゲームオタク)である宏嵩(ひろたか)。オタク同士だからこそ楽な部分もあれば、オタク同士ゆえに悩む部分もある。そんな不器用な2人をメインに、サブキャラたちの恋愛事情やオタクライフを絡めて描いた胸キュンラブコメディ。

乙女ゲーの分岐は間違えないのに、恋人の選択はいつも間違えてしまう成海。「恋人にするのはもったいない、だってだいじなオタク友達だから」と、幼馴染で同僚の宏嵩との恋愛を否定するものの、付き合い始めてからの成海を見ていると、まさに相性ぴったりの2人と言わざるを得ません。一緒にゲームをしたり、コミケに行ったり、オタ友たちと盛り上がったり……普通のOLとして擬態※5 している時より、ずっといきいきしている成海の姿に、趣味を理解してくれる相手との恋愛っていいものだなあとしみじみ実感させられます。

また、あまり嫉妬心などを表に出さないクールな宏嵩ですが、成海がコミケで参加者と話している姿を見て「あ、これジェラシーだ」と気づくシーンは必見。好きなサークルさん※6 相手だと、彼と話すよりもテンション上がっちゃう! なんて経験、思わず「あるある」と頷いてしまう方も多いのでは?

成海&宏嵩のカップルはもちろん、友人の小柳&樺倉カップルが、これまた正統派ツンデレペアで可愛いので、そちらもオススメです。

キュートな恋模様に胸キュン!『腐女子っス!』

『腐女子っス!』 御徒町鳩 / KADOKAWA / アスキー・メディアワークス

コスプレイヤー※7 ・ユキ、同人作家※8 のマンガ描き・めぐみ、同人小説書き・えりは、同じ高校に通う仲良し“腐女子高生”3人組。萌えに創作に邁進していた彼女たちに、突然舞い降りてきた「恋」。はたして、恋とオタ生活は両立できるのか? 思春期の少女&少年たちの揺れる心を瑞々しく描いた意欲作。

本作の良いところは、オタクや腐女子を特別な存在として扱っていないこと。恋に悩んだり、進路に迷ったりする姿は、普通の女子高生と変わりません。ユキ、めぐみ、えりの3人は、漫画部に所属してはいますが、自分が腐女子なことを、ことさら強調したりはしません。基本的に、擬態ができている腐女子です。

でも、だからこそ、彼女たちは自分の趣味を恋人に伝えることを躊躇します。
「オタクだと知られたら、嫌われるかもしれない」「こんな自分をさらけ出したら、引かれるかもしれない」
そんな彼女たちの葛藤を、作者は繊細かつリアルに描き出します。オタクにとっては、趣味と恋愛との両立も重要な問題なのです。たとえば、漫画家を目指すめぐみは、非オタである彼氏に対して、知らず知らずのうちに壁を作ってしまいます。「オタクじゃない人に話しても仕方ない」とめぐみは考えますが、彼氏はそんなめぐみの態度に不安を感じ、ぎくしゃくしてしまいます。

恋愛ものとして胸キュン度の高い本作ですが、高校生活の楽しさや、女同士の友情、創作を志す者の悩みと成長なども描かれており、青春マンガとしてもオススメです。

隠れオタという生き方

オタクがもっとも恐れると言っても過言ではない「オタバレ※9」。前述の2作でもそういったシーンはありますが、ここで紹介する2作品は、「オタバレ」に関するシビアな現実を、時にコミカルに、時にシリアスに描いています。

特撮オタのOLが送る爆笑コメディ!『トクサツガガガ』

『トクサツガガガ』 丹羽庭 / 小学館

仲村さんは26才のOL。毎日手作りのお弁当を持ってくるせいか、彼氏に尽くすハイレベル女子力の持ち主だと思われている。が、実は女子力ならぬ、女「死」力ほとばしる「特オタ(特撮オタク)」。
辛い時も、苦しい時も、大好きなシシレオー(特撮ヒーロー)のことを思い出せば勇気百倍。そんな仲村さんの、ちょっぴりおかしくて切ない特オタライフ!

ひとくちに「オタク」と言っても、マンガやアニメが好きな人のことばかりを指すわけではありません。主人公の仲村さんは、いわゆる「特撮オタク」。特撮と言ってもSFXのことではなく、変身して戦う「特撮ヒーローもの※10」を指します。
特撮って子供が観るやつでしょ? とあなどるなかれ。今の特撮は、子供と一緒に観ているお母さんのほうが思わずハマってしまうほど、奥が深いんです。

仲村さんは、小さい頃からの特撮ファンなのですが、女らしくあれと言う母親のせいで、好きなものを封印してきた過去があります。その反動もあり、一人暮らしになったいま、仲村さんの部屋はすっかりオタ部屋に……。ですが、好きなものを否定され続けた記憶は、いまも彼女の心を縛りつけています。

「好きなら堂々としてればいいのに」
「隠すってことは、やましい気持ちがあるんじゃないの?」
何気ない一般人のひとことに、人知れず傷ついた経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

本気で好きだからこそ、知られたくない。言えば馬鹿にされるかもしれない。自分がけなされるのはともかく、好きなものを辱められるのは耐えられない。オタクなら誰しも感じたことのある葛藤に、仲村さんもまた陥ります。ひょっとしたら、意外にさらっと受け入れてもらえるかもしれない。そんな考えが頭をよぎりつつも、仲村さんは、やはり隠れオタとして生きていくことを選びます。

そんな重い部分も描かれる本作ですが、基本はコミカル。要所要所で出てくる特撮ヒーローたちの名シーン、名セリフ(主に仲村さんの脳内再生)に、胸が熱くなることもしばしば。それに励まされる仲村さんの姿がまた、おかしいやら可愛いやらで、思わず頬がゆるゆるになってしまうことも。

特撮は興味ないという方にこそ読んでほしい、元気が出るマンガです。

コスプレ界の深淵に迫る問題作!『コンプレックス・エイジ』

『コンプレックス・エイジ』 佐久間結衣 / 講談社

第63回ちばてつや賞に入選した読切作品がネットで話題沸騰となり、その短編を下敷きにした連載作が、この『コンプレックス・エイジ』です。

片浦渚は26歳の派遣社員。彼女にとってコスプレは人生のすべて。大好きなキャラクターになりきるために努力を惜しまない渚だが、年齢と体格が理想とのズレを生んでいく。仲間との関係や、家族や会社の同僚へのカミングアウトなど、コスプレイヤーのリアルな実像を暴き出す問題作。

主人公・渚にとって、コスプレは単なる自己表現や趣味ではありません。まさに、生きる意味そのもの。だからこそ、完璧でないことが許せず、原作をよく知らずにコスプレをする相手を痛烈に批判したり、衣装のディテールが原作と異なっていたことに気づいて、徹夜してまで衣装を作りなおしたりと、一般人から見れば「どうしてそこまで……」と思うことに、とことん執着します。

渚は普段、派遣OLとして働いていますが、仕事に対してはなんの情熱も持っていません。そのことを正社員の葉山に見破られ、嫌味混じりの叱咤を受けます。しかし、嫌な女だと思っていた葉山と、渚はイベント会場でバッタリ出会ってしまいます。実は、彼女も同じコスプレイヤーだったのです。一気に打ち解け、ともに撮影旅行へ出かける渚と葉山。そんな矢先、葉山のコスプレ写真が同僚に見つかるという事件が……。

読み始めは、渚に対して反感を抱く読者も少なくないかもしれません。自分がこうありたいという理想を体現したような年下レイヤーの出現に、焦りと嫉妬を抱く彼女を痛々しいと感じ、目をそむけたいと思う方もいるかもしれません。ですが、コスプレを巡る親とのいさかいや、恋人とのすれ違いなど、残酷な現実に幾度も直面する渚は、それでもひたむきに「好き」を追求しようとします。そんな彼女の姿に、いつしか心打たれ、応援したくなる人も多いのではないでしょうか。

華やかで楽しそうに見える世界の裏側を痛烈に描いた本作は、一度読み始めたらページをめくる手が止まらなくなるはずです。

オタク生活の楽しみ方

オタクに生まれたからには、めいっぱい楽しみたい! ということで、オタクたちの日常生活を描いたマンガをご紹介します。あるある! と共感するエピソードもあれば、いやいや、そこまでは……と笑ってしまうエピソードもあり。魅力的なキャラクターが満載の3作品をお楽しみください。

パリジェンヌのオタク的日常!?『腐らんす日記』

『腐らんす日記』 大清水さち・ヤス / 講談社

花の都・パリを舞台に、日本のMANGAが大好きなフランス少女4人組が、おうちでひたすらオタトーク! 天然少女のモニーク、メガネっ子のトリシア、お嬢様のクロエ、原書まで読んでいる本気オタクのアメリなど、個性豊かな女の子たちのゆるふわOTAKU生活をご堪能あれ!

『じょしらく』で、女子落語家たちの楽屋ガールズトークを描いたヤス先生が、作画を手がける本作。可愛い女の子たちがわちゃわちゃするノリは同じですが、今回の舞台はフランスのパリ。登場する女の子たちは全員フランス人のオタクという設定。ただし、やってることは日本のオタクと変わりません。

好きなキャラのキャラ弁(サンドイッチ)を作ったり、エクレアを巻物代わりに口に咥えてニンジャの真似をしたりと、バカバカしくも、「好き」を一生懸命に追いかけている女の子たちの姿に、思わずにっこり。

一部、実際のマンガ作品が登場するのも本作の特徴です。第1話は『進撃の巨人』ということで、新刊を読み終わった瞬間、クロワッサンを食らう巨人へと変貌するモニーク。他のメンバーもノリノリで「母さぁーん」と声をあげたりと、見ているだけで楽しそう! 『進撃の巨人』ファンならニヤリとするであろう、サシャの芋盗み食いの名シーンも、しっかりパロディーにして再現しています。

女子が複数集まれば、どのキャラが好きかのトークに花が咲くのは当然ですが、時には推しキャラを巡って一触即発の空気になることも。とはいえ、そこは仲良し4人組。すぐに元のゆるゆるした雰囲気に戻ります。

海外のOTAKUブームが盛り上がりを見せる今、モニークみたいな外国人の女の子たちと、国境を超えた萌えトークが出来る日も近いかも?

大学オタクサークルの青春白書!『げんしけん』

『げんしけん』 木尾士目 / 講談社

アニメ・漫画などのオタク文化を研究する大学サークル「現代視覚文化研究会」=げんしけん。そのげんしけんを舞台に、オタクたちの日常をリアルに描き出した作品。現在、第二部(二代目)が連載中ですが、初代・二代目ともにアニメ化されている大人気作品です。

本作の魅力は、オタクたちの日常がいきいきとコミカルに描かれていることですが、登場人物の多彩さ、キャラ立ちの巧みさも人気の理由となっています。大学入学と同時にオタデビューを遂げた主人公・笹原、笑顔の素敵な美青年だけど、誰よりもディープなゲームオタクである高坂、二次元にしか興味を示さない典型的な男オタクの斑目、巨乳のコスプレイヤーでオヤジフェチの大野さん、過去のトラウマが理由でオタク嫌いになってしまった腐女子・荻上さん、高坂の付き添いだったはずが、不本意ながら入部してしまった春日部さんなど、個性的なキャラが盛りだくさん。

大野さんの名言である

「ホモが嫌いな女子なんかいません!!!!!」
は、見聞きしたことがある方も多いのでは?

また、唯一の一般人である春日部さんと、部員たちの交流もまた、本作を彩るスパイスとなっています。エロゲ※11 や、18禁同人誌にドン引きし、部員たちの趣味を理解できないと公言しつつも、春日部さんは決して彼らを頭から否定しようとはしません。彼氏が部員だからという理由で、げんしけんに入り浸っている春日部さんですが、次第に部員たちに染められていく姿は可愛らしく、廃部の危機と聞いて大学の自治委員会に乗り込むなど、漢気(女ですが)溢れる姿に、胸キュンする人も多いのでは。

個性豊かな部員たちですが、ともに行動していく中で、時に悩み、葛藤しながらも仲間としての絆を深めていく……そんな青春群像劇としても楽しめる作品。オタクの生態を知る入門書としてもどうぞ。

追っかけ女子の「あるある」が満載!『2DK』

『2DK』 竹内佐千子 / 講談社

パティシエでしっかりものの「こむぎ」と、クリエイターでフリーダムな「きなり」。ルームシェアをすることになった2人の共通点は、“若手イケメン俳優好き”だということ。ミュージカルに特撮、舞台にBL映画と、毎日がトキメキに満ち溢れた2人のリアル・追っかけコメディ。

テニミュ※12 などのミュージカルや舞台をきっかけに、お気に入り俳優を追いかけた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか? この作品の2人もまさにそう。よく「生モノ※13 萌えは忙しい」と言われますが、こむぎ・きなりの2人を見ていると、さもありなん……と頷いてしまいます。一人二人を追いかける分には平気でも、数十人と膨らんだターゲットを追いかけるのはなかなかに大変。それでも、新人俳優チェックはやめられない! のが、オタクの性(さが)というもの。

実際の作品名や俳優名がポンポンと出てくるのも、本作の特徴。若手俳優好きの方ならば、リアルすぎる2人の言動に、ニヤリとなること間違いなしです。また、オタク同士の同居ものとしても興味深く、ルームシェアに至るまでの過程や、喧嘩のあとの仲直り方法など、思わずくすりと笑ってしまう場面も。

本作のほか、竹内佐千子先生の「追っかけ」をテーマにしたエッセイ『おっかけ!』や、ゲイや性同一性障害の人たちとの赤裸々トークをまとめた対談本『四巨頭会談 男好きの男と女好きの女と女だった男と男だった女』などもオススメです。

同人活動の光と闇

単なる趣味と呼ぶにはあまりにも深い、「同人活動」。何かを創造するという意味では、プロとアマに違いはありません。楽しいこともあれば、苦しいこともたくさんあります。ここでは、そんな同人活動にスポットを当てた3作品をご紹介します。

同人やめますか、それとも……?『腐女子になると、人生こうなる!~底~』

『腐女子になると、人生こうなる!~底~』 御手洗直子 / 一迅社

『31歳BL漫画家が婚活するとこうなる』で、腐女子の婚活を描いて話題になった、御手洗直子先生のオタクすぎる青春白書。同人と出会ってしまったせいで、人生が180度変わってしまった主人公・ソノミ。フィクションともノンフィクションともつかぬ自虐ギャグに、抱腹絶倒必至です。

勉強もスポーツも出来る、普通の明るい女子だったソノミ。彼女を変えたのは「同人」という魔物だった……! というわけで、のっけからキてます。期末試験の前日に、オンリー※14 に参加して深夜バスで帰宅するソノミ。当然、勉強など何もやっておらず、学年最低点を取るなど、順調に同人クズの道を歩んでいきます。

ソノミほど極端な例は、なかなかないと思いますが、少ない小遣いの中で、いかに薄い本※15 をたくさん手に入れるか戦略を立てたり、原稿合宿と銘打って集まったものの、萌え話に終始して何も進まなかったり、好きな同人作家さんにキモい長さのメールを送りつけたりと、同人経験のある方なら誰もが頷いてしまうようなエピソードが盛りだくさん。

舞台設定は少し前(2004年頃)なので、当時を懐かしむも良し、オタクはいつの時代も変わらねえな~と共感するも良し。読んでいるうちに、ソノミが他人とは思えなくなる、かも!?

同人サクセスストーリー!『ドージンワーク』

『ドージンワーク』 ヒロユキ / 芳文社

アニメにもなった本作は、同人界を舞台にした4コママンガです。主人公・長菜なじみは、同級生・露理の誘いで同人誌即売会に参加する。そこで再会した幼馴染・ジャスティス(超大手※16 の同人作家)に影響され、金儲けの手段として同人作家を目指し始める。

4コマということで、さくさく読めるこの作品。エロスと下ネタ満載にも関わらず、登場人物があっけらかんとして嫌味がないせいか、いっそ清々しさまで感じられるほど。

登場人物全員がキャラ立ちしているのですが、特にジャスティスがいい味を出しています。紳士的な態度で、とんでもなく変態な言動を繰り返す男・ジャスティス。整った容姿とのギャップもおかしく、人気ナンバーワンというのも頷けます。

金儲けのために同人活動を始めたなじみ。はじめは目も当てられないほど下手くそでしたが、部数が伸びるにつれ、本気で「売れる」方法を模索するようになります。調子に乗って1000部も刷っては余りまくったり、羞恥心を捨てた結果、イベント会場で痴女レベルの言動をしてしまったりと、失敗を重ねていくなじみですが、それでも彼女は描くことをやめません。

勢いのあるギャグ描写に爆笑するも良し、同人作家の成長記として楽しむも良し、の一粒で二度美味しい作品です。

オタクのダークサイドを抉り出す『ヨイコノミライ [完全版]』

『ヨイコノミライ [完全版]』 きづきあきら / 小学館

日々オタク話をするだけのゆるい集まりである「漫画研究会」。部員の井之上は漫画は描けないものの、よい漫画家を育てたいという夢を持っている。だが、青木杏というひとりの少女が介入することで、馴れ合っていた部員たちの関係が崩壊していく……。オタクのダークサイドを抉る問題作とも呼べる作品です。

批評家きどりの天原や、根拠のない自信にすがりつく夕子、不満を心に溜め込んでリスカを繰り返す桂坂、努力もせずにただ己の才能を信じている平松……オタクの嫌な面をとことん描き出したストーリーに、ダメージを受ける読者多数! な本作。コミュニケーション能力の低さや、思い込みの激しさ、自己顕示欲や自己承認欲求の強さ……。オタクにありがちな負の性質を盛り込んだキャラクターたちの言動は、あまりに辛く、痛々しく、読んでいるこちらの精神力をゴリゴリと削っていきます。

下に見ていた友人の画力がどんどん上達していくことで、焦燥や嫉妬を露わにする平松の心理描写はまさにこの作品の真骨頂。このエピソードはSNS等で話題になったので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。

そんな彼らの内側へ巧みに侵入し、引っ掻き回していく美少女・杏。ある意味、創作することの苦しみをもっともよく知る彼女は、脳天気な部員たちの言動が許せません。

こんな…ゴミみたいな…ただの「消費者」を、モノを創る人間に出来ると信じてるなんて……おめでたい人…
部員たちに漫画を描かせようと働きかける井之上を見て、杏が呟く台詞です。

彼女の暗躍により、ある者は取り返しのつかない場所へ堕ちていき、ある者は痛みの先の救いを得ます。残酷ですが、すべては「彼ら自身」が導いたことでもあります。現実を確かに見据える勇気を持つ者だけが前に進めるのだと、この作品は告げています。

暗黒版『げんしけん』とも言える本作。痛くて苦しい読書体験ですが、読み終えた後は、きっとあなたの心に何かを残すはず。

まとめ

いかがでしたか? 「オタク」と一口に言っても、アニメ、マンガ、ゲーム、特撮と、さまざまなジャンルが存在します。また、批評・分析を専門とする人もいれば、コレクションする人、創作する人、コスプレをする人など、関わり方もそれぞれ異なります。

ですが、「好き」をひたすら追求しているという点ではみな同じ。そんな熱いオタクたちのマンガ、ぜひ手にとってみてください。

付録:いまさら聞けない? オタク用語の基礎知識

※1 コミケ:言わずと知れた「コミックマーケット」の略称。同人誌即売会としては最大規模。夏冬の2回開催され、サークル数は35,000、来場者数は50万を超える巨大イベントとなっている。経済効果は180億円とも言われ、非オタク市場からも注目されている。

※2 萌え:特定のキャラや、キャラ同士の関係などを目にした時に感じる、心が浮き立つような心情を表現したもの。恋愛感情と似ているが、対象キャラとの関係に自分自身を介在させたいという欲求が必ずしもあるわけではない(この点が、一般人に理解されにくい部分である)。

※3 pixiv:ピクシブ株式会社が運営する会員制イラスト投稿コミュニティサイト。イラストだけでなく、小説も投稿することができる。ユーザー数1,000万人を超える巨大SNSであり、pixiv発のイラストレーターや漫画家なども多く輩出している。

※4 腐女子:男同士の恋愛(いわゆるBL、ボーイズラブ)を愛好する女子のこと。同様の男性のことは「腐男子」と呼ばれる。

※5 擬態:腐女子やオタクだとバレないよう、一般人として振る舞うこと。マンガやアニメの話題が出ても知らないフリをする、キャラグッズは目につかないところに隠し持つ、おしゃれやメイクの手を抜かない、一般人の興味を持ちそうな話題を用意しておく、など内容はさまざま。完璧な擬態をおこなっているにも関わらず、察知能力の高いオタクに見破られることもままある。

※6 サークル:同人サークルのこと。同人誌や同人ゲームなどを制作する目的で結成された団体を表す。複数人で結成している場合もあるが、個人(一人)サークルも多い。

※7 コスプレイヤー:コスプレをする人。レイヤーとも略される。昨今では、コミケなどのイベント会場だけでなく、スタジオ等を借りて本格的なコスプレ写真を撮るコスプレイヤーも多く、コスプレ写真を収めたDVDや、フルカラーのコス写真集を売っているコスプレサークルなども存在する。

※8 同人作家:同人誌を描(書)いて売っている人。アマチュアがほとんどだが、プロの漫画家も混じっている。アニメやマンガの二次創作をメインに活動する者が多いものの、COMITIA(オリジナルの創作物に限定した同人誌即売会)などのイベントで作品を発表し、そのままデビューする作家も増えている。

※9 オタバレ:オタクだということが、まわりの人間にバレること。世間の目が和らいできたとはいえ、まだまだオタクに対する偏見や、好奇の視線はなくなってはいない。無用な面倒を避けるため、オタク趣味を隠す人は多く、オタバレを極端に恐れる者も少なくない。

※10 特撮ヒーローもの:「スーパー戦隊シリーズ」と、「仮面ライダーシリーズ」が放映される日曜の朝の時間は「スーパーヒーロータイム」と呼ばれている。単に「ニチアサ」と呼ぶ場合もある。一見、子供向けと思われがちな両シリーズだが、想像以上に重い設定や、作りこまれた脚本に唸らされることも多い。

※11 エロゲ:18禁PCゲームのこと。家庭用ゲーム機では18禁ゲームは扱えないため、移植される場合は、そういったシーンはカットになるか、別の表現に変更される。「Fate/stay night」など、エロゲからアニメ化されて人気を博した作品も多い。

※12 テニミュ:許斐剛先生の少年マンガ『テニスの王子様』を舞台化したミュージカル。当初は客足も芳しくなかったが、公演を重ねるにつれ、オークションでチケットが高騰するなど、社会現象とも言える盛り上がりを見せるようになった。人気俳優を多く排出し、若手の登竜門とも言われている。

※13 生モノ:アニメ・マンガなどのような二次元ではなく、現実の俳優やタレント、アーティストなどのこと。肖像権の侵害など、デリケートな事象が絡むため、同人などで取り扱う場合は細心の注意が払われる。アニメの実写化などは、2.5次元と呼ばれることも。

※14 オンリー:オンリーイベントの略。特定の作品やキャラクター、あるいはカップリング(恋愛関係にあるキャラ同士の組み合わせ)のみを取り扱った同人誌を頒布する即売会のこと。昨今では、企業主体で開催されるものが多いが、昔は個人主催のものがほとんどだった。

※15 薄い本:同人誌の隠語。「薄くて高い本」とも。一般的に同人誌は商業誌に比べるとページ数が少なめである。小部数印刷のため、36ページで400~500円など、商業誌に比べると値段が高い。

※16 大手:同人誌の頒布数が多いサークル=人気サークル。同人サークルの規模を表す用語としては、「外周」「壁」「大手」「誕席」「平スペ」「ピコ」などがある。


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コスプレ、特撮、同人…オタクの実態を描いたマンガ10選

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